今回は、6月23日に開催されました「第104回次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会」の議論内容について整理しました。この会議では、日本の脱炭素化に向けた重要な政策ツールである「長期脱炭素電源オークション」の第3回入札に向けた、より具体的で詳細な制度設計が議論されています。
会議の概要
本作業部会は、脱炭素電源への新規投資を促進するため2023年度から開始された「長期脱炭素電源オークション」について、その具体的な制度設計を議論するものです。このオークションは、落札した電源に対して原則20年間、固定費水準の容量収入を保証することで、巨額の初期投資を要する脱炭素電源の予見可能性を高めることを目的としています。
第3回入札に向けた主な論点
今回の議論の中心は、第3回入札に向けた制度のさらなる詳細化であり、多岐にわたる論点が提示されました。
上限価格とCCS支援制度との連携
まず、入札の上限価格については、最新の発電コスト検証の数値を基に、電源種ごと、そしてエリアごとにきめ細かく設定されることが示されました。特に、CCS付き火力発電の上限価格設定において、他の支援制度との重複を避けるため、当初の2段階設定案を取りやめるという迅速な見直しが行われた点は、政策間連携の重要性を示すものと認識しました。
水素・アンモニア・CCSの投資促進策
水素・アンモニア混焼やCCSにおける追加投資の扱いについても、具体的な方針が示されています。混焼率やCO2回収率を一定以上向上させる改修投資のみを支援対象とすることや、アンモニア専焼の範囲を柔軟に解釈することで、より実効性の高い脱炭素化投資を促す狙いがうかがえます。また、関連する支援制度の適用が受けられない場合に、市場退出ペナルティを免除する特例を設けるなど、事業者の投資リスクを軽減するための配慮がなされていることがわかります。
事後的な費用変動への対応とセーフティネット
長期にわたる事業で課題となるインフレや金利変動リスクに対しては、各種指標を用いた落札価格の自動補正が導入されます。さらに、事業者の責によらない大幅な固定費増加に対応するため、建設費や運転維持費の増加分の一部を追加の落札価格として回収できる仕組みの導入が提案されたことは、特筆すべき点です。これは、建設期間が10年を超えるような大規模電源への投資を後押しする強力なセーフティネットとなりうると理解しました。この仕組みが過去の落札案件にも遡及適用される方向であることも、制度の公平性を担保する上で重要です。
新たな投資回収の仕組みとサイバーセキュリティ
加えて、事業者の創意工夫をより引き出すための新たな投資回収の仕組みの検討や、蓄電池システムに対するサイバーセキュリティ要件の強化など、制度が常に現実の課題に対応し、進化し続けている様子が示されました。特にセキュリティ要件の強化は、エネルギーインフラ全体の安定供給を確保する上で不可欠な措置であると認識しました。
おわりに
今回の「第104回制度検討作業部会」の議論内容を読み解くことを通じて、長期脱炭素電源オークションが、単なる入札制度に留まらず、インフレや金利、他制度との連携といった現実的な課題に対応するため、常に進化し続けるダイナミックな制度であることを理解することができました。
特に、事業者の予見可能性を確保するためのセーフティネットの導入や、CCS支援制度との整合性を図るための迅速な見直しは、巨額な初期投資が不可欠な脱炭素電源への投資を促進する上で、極めて重要な要素であると認識いたしました。これらの精緻な制度設計は、日本のエネルギー安全保障と2050年カーボンニュートラルの実現という二つの大きな目標を両立させるための、重要なプロセスであると感じています。
今回の学びを通じて、複雑な要素が絡み合うGXの推進において、技術と政策、経済の連携がいかに不可欠であるかという点を再認識しました。今後も、このような会議資料から学び続け、GXの動向を把握していきたいと思います。
