GXとカーボンニュートラル:政策と技術の最前線

GX検定アドバンストの取得をきっかけにブログを新設しました。これまで関心を抱いていたグリーントランスフォーメーション (GX)やカーボンニュートラルが、いっきに身近に感じられ、その奥深さにすっかり引き込まれてしまったのです。このブログは、まさにそんな初心者としての私が、日々学びを深めながら発信していく探求の記録です。特に、脱炭素社会の要となる電力分野の政策や技術革新、そしてそこに横たわる複雑な課題について、一歩一歩調査分析を進めます。ガバナンスの知見も活かしつつ、難解に思えるテーマの理解を深めていきます。

第5回 CCS事業の支援措置に関するWGでの議論を読み解く:二酸化炭素回収・貯留を加速する制度設計

今回は、2025年6月11日にオンラインで開催された「第5回 CCS事業の支援措置に関するワーキンググループ」の議論内容を私なりに読み解き、整理しました。経済産業省が開催する「CCS事業の支援措置に関するワーキンググループ」は、日本の脱炭素化戦略における重要な柱であるCCS(Carbon Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)の具体的な制度設計を議論する場です。

www.meti.go.jp

 

会議概要

本会議は、令和7年6月11日(水)13:00~15:30 にオンラインで開催されました。

主な議題は、「CCS支援制度について(各論)」「CCS 事業(パイプライン案件)の支援措置に関する中間整理原案について」でした。

 

CCS支援制度について(各論)

資源エネルギー庁資源・燃料部燃料環境適合利用推進課CCS政策室が作成した、CCS支援制度の詳細設計に関する議論の論点が提示されました。主要な論点は以下の通りです。

  • CCS支援制度の対象となるコスト
  • CCS支援制度のイメージ・参照価格について
  • 事後的なコスト変動の反映方法
  • 自立化を促す仕組みの考え方
  • 事業者の責めに帰さない事由による一時的な事業停止時及びクロスチェーンリスクへの対応の考え方
  • 不可抗力事由や不可抗力に準ずる事由の整理
  • コスト差に着目した支援の返還等について
  • 長期脱炭素電源オークションとの関係

特に注目すべきは、CCS事業が分離回収、輸送、貯留のプロセスで構成され、一つでも欠けたらバリューチェーンが立ち上がらないという特殊性を踏まえ、バリューチェーン全体に必要な構成要素すべてを支援対象とする方向で検討が進んでいる点です。これは、CCS事業の複雑性と初期投資の大きさを考慮した現実的なアプローチと考えます。

具体的な支援イメージとしては、基準価格(分離回収コスト+輸送貯留料金)と参照価格(炭素価格)のコスト差に着目した支援が、CO2量に応じて支援期間を通じて実施される計画です。金融コスト抑制のため、CAPEX相当分が先行的に支援される可能性も検討されており、事業者の初期負担軽減への配慮が伺えます。

また、事後的なコスト変動への対応として、電気代や燃料代など、ベンチマーク価格を用いた自動調整の仕組みが検討されています。これは、長期にわたる事業の予見可能性を高める上で重要な要素です。

自立化を促す仕組みとして、支援期間後も事業継続義務を設けることが議論されています。これにより、一過性の支援に終わらず、持続可能なCCS事業の育成を目指す政府の強い意思を感じます。事業者の責めに帰さない事由による一時的な事業停止時やクロスチェーンリスクへの対応も具体的に検討されており、予期せぬ事態に対するセーフティネットの構築が進んでいることが理解できました。

CCS事業(パイプライン案件)の支援措置の在り方 中間整理(原案)の概要

CCS支援措置のこれまでの検討をまとめた中間整理の概要版です。CCSが鉄鋼、セメント、化学などの脱炭素化が困難な分野(ハード・トゥ・アベート)において、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に不可欠な技術であるという認識が示されています。

特に、「第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)」に基づき、政府支援を通じてCCSを先行的に事業化し、自立化とコスト競争力のあるCCSバリューチェーンを構築することが言及されています。

これまでのCCSへの取り組みとして、北海道苫小牧市での大規模実証試験や、CO2分離回収技術開発、液化CO2輸送船舶実証、そしてCCS事業法の整備(2024年5月成立)といった具体的な進捗が示されています。これにより、2026年頃の投資決定と時間軸を合わせ、2030年頃の事業開始を目指すという明確なロードマップが示されたことは、事業者の予見可能性を高める上で非常に重要であると認識します。

支援措置の基本的な考え方として、事業者と政府の間での適切なリスク分担が必要であり、CCSコストと排出者が負担するCO2対策コストのコスト差に着目した支援(CCSコスト差支援措置)が提案されています。

また、支援対象の選定においては、輸送貯留料金のオークションとは別に、事業計画全体に対する総合評価を導入し、複数年度にわたる選定を通じて、2030年代初頭の連続的なCCS事業立ち上げを目指す方針が示されています。

 

おわりに

今回の「CCS事業の支援措置に関するワーキンググループ」の議論を通じて、私はCCSが単なる環境技術ではなく、日本のエネルギー安全保障、経済成長、そして産業構造の変革を支える基盤技術であることを改めて認識しました。

今回のCCSに関する制度設計の議論は、CO2排出量を削減していくための具体的な方策を示しています。特に、バリューチェーン全体への支援や、予見可能性を高めるための仕組み、そしてリスク分担の考え方は、事業者が長期的な視点で安心して投資できる環境を整備する上で不可欠な要素であると強く感じました。

今後も、こうした政府の会議資料を読み解き、自身の知見を深めながら、日本の脱炭素化と経済成長の両立がどのように進んでいくかの情報収集を続けていきたいと思います。